ムラサキノヤカタ

徹頭徹尾ひとりごと

知覚・記憶・表現

 生前の記憶を維持してSNSを使う2歳児の夢を見た。彼女はれっきとした2歳児だったが、その文体は常に軽快なステップを踏んでいた。なぜ彼女がその2歳児の中にいると気付くことができたのか、振り返ってみてもよくわからない。彼女は大学2年生の時に、ボストンの大学に1セメスターだけ留学していた。僕が大学1年生の時のことだ。彼女と1対1で話す機会は少なくなかったが、僕は彼女からボストンの話をしっかりと聞いたことがなかった。きっと僕に話そうと思う話題がなかったんだろう。興味深い話題を引き出せないのは8割が聞き手のせいだ。

 「2歳児の言語感覚を思い出すにはどうしたらいいんだろう。僕の弟が2歳から3歳の間、『6』を『どく』と発音していたように、言語の捉え方にはその人の何かを示唆するものが含まれている気がするんだ」

 2歳児は大きな目を見開いて、静かに僕の話を聞いていた。25歳が何を考えているかだってよくわからないが、2歳児となるともっとわからなかった。

 「今も昔も、そんなに変わらないよ、あなたは」

 2歳児はそう呟いた。

 そうかもしれない。