ムラサキノヤカタ

徹頭徹尾ひとりごと

2021-01-01から1年間の記事一覧

四の路、騒音のない世界

雪がちらつく大晦日に、去っていった日々のことを思い出した。あの日々は僕の精神をかつてないほどに擦り減らすとともに、僕の身体に極めてシンプルな行動原理を刻み込んだ。あの日々がなかった世界線の僕を想像してみる。どこに向かっていただろう。 あの薄…

あらゆるものは削ぎ落とされる

今の自分は停車駅1駅分の時間で何が書けるのか、試してみたくて筆を手に取る。きっと大したことは書けない。多分それでいいんだ、と書いて結んでしまうといつもの僕となんら変わらない。せっかくなので違う僕を書きたい。 ここ数週間の自分には、圧倒的に観…

手紙

見晴らしのいい場所を見つけて居座る。学部と大学院で異なる大学に通っていた僕は、それぞれのキャンパス内における自分の居場所をいくつか確保していた。マンモス私大のキャンパスは寛容だ。どんな者にもそれなりに馴染める居場所が用意されている。コミュ…

結果無価値の集落

現代のインターネット環境を前提とした美しい小説と出会いたい。その中でも、インターネット上の出来事ならではの特殊性みたいな面にスポットを当てていない作品がいい。我々の人生はインターネット空間と地続きになって久しいのに、創作内におけるインター…

月明かりの下に花束

24歳になった。マザー・テレサと星新一がこの世を去った1997年に僕は生まれた。要はこの地球にとってはもちろん、人類の歴史にとっても、わりに最近ということだ。 変わって行く世界と変わらない仲間たち、それぞれに敬意を払うことを忘れないでいたい。 高…

ポカリスエットの味

最初に発熱をジェットコースターに喩えたのは誰だったのだろう。今ではすっかりありふれた表現になってしまったし、そのせいでなんだか涼宮ハルヒの書き出しみたいにも思える。でもきっとその発明の瞬間には、新鮮な響きを持っていたはずだ。 きっと織田信長…

風鈴

「人の血が通っているかどうかが重要だ、と君は言っていたよね。僕は君の言っていることがよくわからない。人間だろうがコンピューターだろうが、何を考えているかさっぱりわからないのは一緒じゃないか。程度の問題だ」 僕はユウキにゆっくりと語りかけなが…

あの坂を越えて 私になれたらいいなんて

少しずつ陽の当たる時間が長くなってきているような気がする。午後4時の早稲田駅の周囲は、今し方入学試験を受けてきたばかりの受験生の群れが、秩序立った列を形成していた。見る人によっては例年と何かが違うように見えそうな、その異様な光景の一部を構成…

イギリスと君の時差

世界は一周した。 僕は一周目の世界において失ってきたものの数を数えようと試みたが、何一つ思い出せなかった。思い出しても確証が持てないのだ。二周目の世界には、似たものが多すぎる。それらを僕は一周目の世界で見たような気もするし、見なかったような…

半年前の自分に聞きたいことが山ほどある

新しいものが必要だった。画期的なもの。天地をひっくり返す概念。 世界の解像度を変化させる、もうひとつの視点。 生き急いでいた故に文字通り教師に刃を向けていたクラスメイトたちを横目に見るたび、僕は思った。「何をそんなに焦っているんだ」 ずっと下…