ムラサキノヤカタ

徹頭徹尾ひとりごと

2020-01-01から1年間の記事一覧

そういえばまだ蝉の声を聴いていない

記憶について考えていた。30年後、きっと僕は昨日のことを思い出すだろう。いや、思い出さなければならない。もう昨日になってしまったこの1日のこと。 早朝に雨が降り、昼を過ぎた頃にもぱらぱらとした小雨がアスファルトを濡らしていた。 その日僕は深夜か…

ライ麦畑と、屋上から見た風

ちょうど4年前、なんの方向性も定まらないまま、フワフワっとした気持ちで大学の法学部に入学した。当時の僕の頭を支配していたのは、「この全く新しく自由すぎる環境を、どうやって生き抜いていこうか」という点だった。あまりにも、縛られることに慣れすぎ…

シャッフル

最後にしりとりをしたのがいつだったか、小一時間考えていたけど全然思い出せなかった。せっかくなので一人でしりとりをすることにした。大学の卒業式は中止になったし、しりとりでもして僕と時間を潰そう。プレイヤーも対戦相手もどちらも僕だ。 見ているの…

サイダーロードのその先で

2020年になってから買ったもの。 時系列は無視。 www.amazon.co.jp 19歳のころ、『饗宴』でお世話になった光文社古典新訳文庫。案の定積読。 学部2年時に受けた倫理学の講義。毎週金曜日、90分間だけその教室に充満する「大学」の雰囲気が僕は好きだった。 …

演劇史Ⅱ

午前0時に帰宅し部屋着に着替えていると、さっきまで着ていたチェスター・コートからピースの香りがした。ずっと昔母に言われたことがあるのだが、どうやら僕は無自覚のうちに、周囲の環境の香りを纏って帰ってくることが多いらしい。彼女に言わせれば、12月…

ブルー・スカイ

人の夢の話を聞くのが趣味だった。 M-1グランプリで優勝したい。週刊少年ジャンプで連載を持ちたい。メジャーリーグでサイ・ヤング賞を獲りたい。研究医になって、祖母と同じ病気で苦しんでいる人々を救いたい…その手の話に興味がないわけではなかったが、や…

春眠が暁を覚えてくれない

ここ数日昼間に目覚めてばかりだったので、ふと、朝日が見たいと思った。強引に体内時計を修正しにかかる。5時に目覚めた僕は、外で降っている雨の音に気付いた。 朝日はまた明日にお預けである。 性根が引きこもりの私にとって、今日の世情は私の出不精に拍…

the end of the world

カラオケルームで性行為に及ぶカップルを3週に1回ほどのペースで目撃していた。僕が20歳の頃のことだ。部屋に監視カメラが設置してあるわけではない、ただ廊下を歩いていると、扉の前を通るだけで部屋の中がある程度見えてしまうのである。 硬くて安っぽいソ…

STAY AWAY

学部在学中最後の期末試験も残り一教科となった。既に卒業単位分の試験は受け終えたため別にばっくれてしまっても構わないのだが、とある縁から知り合った先輩から受講を勧められた民事訴訟法の試験であるから、最後くらい格好のつく成績で大学生活を終える…

別れを前にして

日が沈む頃合いの、市ヶ谷図書館。 2階の閲覧室で僕はすっかり冷めてしまったカフェ・オ・レを飲みながら、生協で買ったばかりの法思想史の教科書を斜め読みしていた。 www.yuhikaku.co.jp 往々にして、試験期間のようなやるべきことが明確に示されている時…