最初に発熱をジェットコースターに喩えたのは誰だったのだろう。今ではすっかりありふれた表現になってしまったし、そのせいでなんだか涼宮ハルヒの書き出しみたいにも思える。でもきっとその発明の瞬間には、新鮮な響きを持っていたはずだ。
きっと織田信長だろう。プリンでも天ぷらでも金平糖でも、先駆者と言ったら織田信長だと相場が決まっている。柔軟に新しい文化を受け入れる織田信長なら、ぎりぎりジェットコースターに乗った経験があったとしても不思議ではない。家臣たちに連れられて、ジェットコースターの始祖に乗り込む信長。始祖は多分亀みたいに遅い。彼はアトラクションという概念を理解できたのだろうか。おそらくできたのだろう。その順応は、トロント・ブルージェイズに加入した川﨑宗則がチームに溶け込むまでの時間より早い。並の人間はそれを真似ることができない。
発熱の話だ。
真夏に発熱をすると、寒い。真夜中、僕の部屋には限定的な雹が降る。冬用の布団に包まれた僕は、全身の関節痛と頭痛に耐えながら、方程式の夢を見た。
「何度も言ったじゃないか。君はいつも問題文を曲解する。一番初めの代入から、根本的に間違っているんだ」